令和初の国賓となるトランプ米大統領の招待は、外交、経済ともに日本に大きな成果をもたらした。北朝鮮による日本人拉致問題では日米の方針が完全に一致していることを世界に示し、主張の違いが目立つ貿易交渉もトランプ氏が安倍晋三政権の内政事情をくみ取り、夏の参院選への影響を回避した。イラン情勢をめぐってはトランプ氏が安倍首相に「ぜひ行ってほしい」とイラン訪問を要請し、米国との緊張緩和の橋渡しに期待を示した。
「私がじかに受け取る。(ホワイトハウスの)私の机に置いておくよう指示し、必ず読む」。政府高官によると、27日に東京・元赤坂の迎賓館で行われたトランプ氏と拉致被害者家族との面会で、拉致被害者の有本恵子さん(59)=拉致当時(23)=の父、明弘さん(90)が「大統領に手紙を書いた。ぜひ読んでほしい」と直訴したところ、トランプ氏は力強くこう応じた。いずれも予定外で周囲を驚かせた。
トランプ氏はこの場で「被害者は取り返す」と明言。横田めぐみさん(54)=同(13)=の母、早紀江さん(83)が持つめぐみさんの着物姿の写真を見たトランプ氏は「ビューティフル」「あなたにそっくりだ」と話しかけ、「必ず会えるよ」と語った。
首相とトランプ氏の会談は11回目となった。トランプ氏がツイッターに投稿した自身の大相撲観戦の動画は世界で400万人以上が閲覧した。外交の最前線では首脳同士がメールや会員制交流サイト(SNS)などで直接連絡を取り合うことが少なくない。首相がトランプ氏と信頼関係を深めることは国益に直結する。その象徴が拉致問題へのトランプ氏の対応だろう。
一方、貿易問題でトランプ氏は「8月にも大きな発表がある」と表明した。だが、実際は「トランプ氏は首相に一切そうした話はしていない」(政府高官)。トランプ氏は滞在中、首相に「対日貿易赤字は何とかならないか」と持ちかけたが、首相は従来方針の説明にとどめたという。日米交渉の焦点である農産品の関税引き下げは、交渉の行方によっては、参院選で自民党の地盤が弱い農業地帯の北海道や東北などに痛手になる可能性があった。
トランプ氏がツイッターで「参院選まで取引を待つ」と投稿し、交渉妥結を急がない意向を示したことは参院選に勝負をかける首相への側面支援となった。
また世界が驚いたのは、米国と対立するイラン問題だ。核合意締結国(米英仏独中露)ではない日本が主導的な役割を担う可能性が浮上している。日本はイランと約40年間、米国とは一線を画した友好関係を続けている。米イランの関係改善や中東の安定に寄与できれば、日本の存在感がさらに高まりそうだ。
トランプ氏は海上自衛隊の護衛艦「かが」で首相と別れる際、こう語った。
「パーフェクトな訪問だった。天皇、皇后両陛下のお人柄に触れ、感動した」
(沢田大典、永原慎吾)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース